研究内容

はじめに

再生医療を一日も早く実現化するために、体細胞初期化や形質転換などの技術を駆使して研究をしています。
テーマは大きく5つあります。
1) 体細胞からiPS細胞への初期化制御
2) iPS細胞やES細胞から心筋細胞への分化制御
3) 体細胞からiPS細胞を介さない直接的な心血管系前駆細胞への誘導
4) Crispr/Cas9によるゲノム編集技術を用いたモデルマウスの作製
5) 視覚再生にむけた学内および理化学研究所との共同研究(再生網膜の機能を数理モデルで評価するプロジェクト)
興味のある方、再生医療実現化に基礎研究の視点から貢献したい方、熱意のある方、どなたでも歓迎します。

2006年に山中伸弥先生のグループにより、4つの遺伝子(Oct4/Sox2/Klf4/cMyc)を体細胞に強制発現させることでiPS細胞という人工的な多能性幹細胞が作り出されること(=体細胞の初期化)が報告されて以来、再生医療の実現化に向けて世界中で初期化の研究が進んでいます。
 私達も、この初期化という現象を学問的に理解しその技術を正しく安全に医療へ応用することを目標としています。これまで、初期化や分化にかかわる種々の経路や重要な分子を同定し、最近では、初期化過程早期でiPS細胞になる確率の高い群(iPS細胞前駆細胞)と心筋細胞の前駆様の細胞群を見出すことに成功しました。これらの成果から、安全かつ効率的なiPS細胞の作製法や、繊維芽細胞から心筋細胞などの目的の細胞へ直接的に転換する技術開発に繋がると期待されます(右図)。
 このように、私達は、未解明な「初期化」の仕組みの一端を少しでも明らかにすることで、安全かつ効率的な再生医療の一日も早い実現に向け、日夜努力を続けています。

最後に

 我々の体は、約270種・60兆個の細胞から形造られていますが、もとは1個の万能な細胞が増殖しながらその性質を変化させ出来上がったものです。我々の何万とある遺伝子の中から転写因子として機能するたった数個の遺伝子を体細胞に強制的に発現させるだけで、誰でも人工的な万能細胞(=iPS細胞)を作ることが出来ます。
 iPS細胞はどうやって形成されるのか?この大きな謎に包まれた世界を探検しながら、今度は、iPS細胞とは違った幹細胞を一緒に作ってみませんか?